研究活動

取り組んでいる研究テーマの一部です。随時アップデートいたします。


介護ビジネスの国際化戦略に関する理論構築と実証

内閣府が推し進める「アジア健康構想」により、日本の民間介護サービス会社がアジアに国際進出しています。本研究は、国際ビジネスの視点から、日系の介護サービス会社がどのように進出先を選び、進出先で人材などを集め、日本式介護を現地で浸透させているのかを明らかにします。介護という非営利性の高いサービス業に関する国際ビジネス研究としても学術的な新規性があり、これから介護に対するニーズが高まるアジア諸国の社会厚生を上げる意味で社会的にも意義が深い研究にればと考えております。

文部科学省科学研究費(基盤(C)課題番号 18K01862)により実施しています。


日本の公的介護施設のサービス・レベルは高いのか低いのか

日本では多くの高齢者が最終的に特別養護老人ホーム(特養)と老人保健施設(老健)を利用します。各ご家庭の負担を軽減できるという意味において特養と老健は非常に大きな存在になっている一方で、社会的には日々介護施設内の悲しいニュースを日々耳にするのも事実です。

今回の研究では、岐阜県内の2014年時点における、特養と老健のサービスのレベルを分析しました。用いたデータソースは、「介護サービス情報公表システム」です。民間企業に監査・統治機能があるように、日本の非営利組織や公的組織にも第三者評価が本格的に推進されつつあり、そこから全国の介護施設運営に関する多くの情報が取得できるわけです。

研究の結果、各種サービスのうち(特養123項目、老健119項目)、介護施設内で完結するようなサービスについては多くの介護施設で実施が達成されているようですが、オンブズマンや地域など第三者との関わりが必要となるサービス項目については実施率が大変低いことが分かりました。 また、身体的なケアを超えて精神的なケアにかかわるようなサービスでも達成度が低いことが分かりました。ただし、そのような実施率が低いサービス項目であっても、入所者アンケートや第三者評価を実施している介護施設では実施率が相対的に高いことも明らかになりました。

今回の分析を日本の介護施設のサービスレベルにまで拡大して解釈するには無理がありますが、少なくとも岐阜県内の特養と老健の計181施設では、基本的なケアサービスのレベルは高いと言えそうであり、民間企業のように内外からのチェック機能を働かせているような、より意識の高い介護施設では、より健全で満足度の高いサービス運営が達成されていると言えそうです。

詳しくはこちらをご覧 ください。
小島・大久保(2015)「介護サービス情報公表システムを用いた岐阜県の高齢者入所施設のケアの質に関する研究」『厚生の指標』厚生労働統計協会, 2015年7月号, pp.25-32.


公企業の効率性とガバナンスに関する実証分析

先進諸国では近年、公共部門における組織(以下、公企業)の多くが、自身のガバナンスによって非効率な経営に陥りがちである。今回イギリスの国営の医療システムである National Health Service(以下、NHS)を研究対象として、公企業はなぜ非効率なガバナンスに陥るのか、またそれは公企業のどの部分に表れるのか、に関して組織内部を検証する。
第 1 に、NHS に対する予算の増額の結果、傘下の Primary Care Trust(以下、PCT:地域ごとに、クリニックを統括している組織)は増額された予算をどのように使用するようになったかを検証する。PCT は NHS 予算の年間約 90パーセントが配分され、各 PCT は予算の多くを各クリニックに対し配分するが、その金額の決定は、各クリニックが利用者に行う診療行為数の申告に基づいている。一方 PCT は、PCT 内部での人件費や管理費などにも予算を使用している。このように、PCT が、NHS 予算増額に伴って、クリニックおよび PCT 組織に対し、どのように予算配分を行っているか、経年的に動向を調査し、その特色を明らかにする。第 2 に、PCT に対する予算増額率と各 PCT の経営陣に対する報酬増額率との関係が経年的にどのように変化したのかに関して分析を行う。PCT は、クリニックを統括・管理する立場から、管理下のクリニックに対する予算配分に大きな裁量を持つ。ブレア改革の目的は医療の質の向上にあったが、上記の裁量権が経営陣に自身への過剰な報酬増というインセンティブを抱かせる可能性がある。そこで、全 PCT の経営陣に対する報酬の動向を個人単位で調査し、その特色を明らかにする。

文部科学省科学研究費補助金(若手(B)課題番号 24730351)により実施しました。


日本における病院版コーポレート・ガバナンス論の確立

本研究では、イギリスの病院におけるガバナンスの先進的な実践を考察し、日本の病院経営に対する示唆を導きだした。手法は、文献ビューおよび質的研究としてのインタビュー調査であった。研究の結果、個々の専門病院におけるガバナンスの実践方法を明らかにできた。その際、現在の病院は、21世紀以降、ボランティア・セクターとのパートナーシップなど、各セクターが協同関係にあることから生み出された産物であるという歴史的な考察も整理できた。また、プライマリーケアを施すクリニックの運営についても検討した。日本への示唆としては、私立病院と公的病院とに分けられる。前者に対しては、専門病院でのガバナンスの実践が透明性および理事会の機動性の面で大いに生かされることができ、そこでの事例は民間企業のガバナンス手法に対してもインパクトを与えるものと思われる。後者に対しては、クリニック内でのスタッフの動機づけが生かされることができると見出した。下記のようにさらなる調査を継続中であるが、今後論文等にて学術的かつ実践的な示唆をより詳細に明らかにする予定である。

文部科学省科学研究費補助金(若手(B)課題番号 21730330)により実施しました。